2021-07-12
K-POPアイドルグループの方ではなく、宇宙空間で起きる超新星爆発の方でもありません。おじさんカップルを描いた映画の話です。
「なんだ、BL映画か」と思われるかもしれませんがBL映画じゃないです。おじさんだからBoys Loveじゃないという意味ではなくて、個人的な解釈ですけどBL映画は”ファンタジー”なんですよ。設定とかキャラとか。そういう意味で、ファンタジーなおじさんカップルを描いた映画ではないし、イケオジカップルのイチャコラを楽しむ映画でもないです。
ゲイ映画もBL映画とは別物だと思ってます。
ゲイ映画はどちらかと言うと、実話に基づいているようなリアリティがあったり、ゲイだからこその関係性であったり、直面する問題を描いている映画だと自分の中ではカテゴライズしています。でも「スーパーノヴァ」はBL映画でもゲイ映画でもありません。描かれているのは家族の話であり、どんなカップルでも直面しうる問題とどう向き合っていくのかという話です。
コリン・ファース演じるサムはピアニスト。
長年連れ添うパートナーである小説家のタスカ―は、ある病を抱えています。もしかしたら最後になるかもしれない予感を持ちながら、二人はキャンピングカーで旅行に出かけます。そこで明らかになる秘密と、下される決断。
映画は字幕派なので、ハッとしたサムのセリフと字幕がありました。2つともサムからタスカ―に投げかけられた言葉で、2つのセリフは連続しています。
“I want to be with you. Every moment”
(片時も離れたくないんだ)
“It’s important”
(絶対に)
「絶対に」の訳がすごくイイ。「大事なことなんだ」では原語に対して言葉数が多すぎる。そして、強い語調だったので強い意味を持つ言葉が字幕でも表現されていてグッときました。
ゲイやゲイカップルを扱う映画では、家族からは疎まれている設定だったり、そもそも家族との関係が断絶している設定になっていることが珍しくないです。でも、この映画では家族や友人が心から2人のことを受け入れていて、男性同士であることをジョークにする人もいないし、不思議そうな顔をする子供もいない。タスカ―の病気のこともみんな知っているし、家族の問題として重く受け止めている。
実の弟にはまだ話せていない家族の大事な話を、弟のパートナーには話せてしまう。そこまでの強い信頼関係を義理のきょうだいと築くことは、ヘテロのカップルでもたやすいことではないはず。政府は同性婚に反対する理由として家族の形態が崩れることを危惧しています。そこにあるのは信頼と愛情の問題であって、性別の問題ではないはずなのです。
コリン・ファースはピアニスト役なので、演奏シーンがあります。本編を見ている間は特に気にしていなかったのですが、エンドロールで使用曲のクレジットが流れてきて、その中に
“Performed by Colin Firth”
とあり、「え?自分で弾いてたの!?」とビックリしました。ピアノが弾けるイケオジ、最高です。
サムとタスカ―はワンコを飼っています。今回の旅行にも連れてきていて、よく世話をしているし、大事にしている…と思って見ていましたが、私が気付いたところだけでも2ヶ所でサムはワンコのことを”the dog”と言うのです。
家族でもある飼っている犬のことを”the dog”と言うだろうか。犬にはルビーという名前が付いているのに、「犬の散歩に行ってくる」と言うだろうか。普通なら「ルビーの散歩に行ってくる」ではないだろうか。あぁ…もしかしたら、サムはルビーのことがそれほど好きではないのか。タスカ―が贈ってくれた犬だから世話をしているだけで、サムにとってはそれだけの意味しかないのか…とルビーがかわいそうになりました。ちなみに、ルビーもエンドロールでちゃんとクレジットされています。”本名”は別にあるようです。
セリフは説明を抑え気味で、普通なら回想シーンを挟みそうなところでも何も説明がないから観客は想像するしかないのですが、2人の演技が自然すぎて、これまで過ごしてきた年月の長さが透けて見えます。そして、イギリス湖水地方のキレイな風景。イギリスは景色が良くても、天気が悪いことが多いから7割減くらいになるのに、景色がとてもキレイです。