2023-06-18
SILVER WINGS 京都
開場待ちの列から八坂神社の入り口が見え、一筋入ると知恩院に隣接する風情のある通り。隣は古美術商、向かいは天下一品というとても京都らしいロケーションのライブハウス。入口ドアのギリギリまでイスを並べてくれてギュウギュウの大盛況。木根ソロもライブハウス規模はもう限界かも。
2曲目が終わって
「ウィンナートーンの風に吹かれて」京都公演にようこそ。
いつもギターの弾き語りが多いから京都は磔磔が多かったですが、今日はグランドピアノがある会場を探しました。なぜ今回はピアノにしたのか?
ローディーと2人で荷物とギターを持って移動すると、両手がふさがってしまうから雨が降ってきても傘がさせない。駅からそれほど離れてない会場だとタクシーも使えない。歩いて5分10分でも荷物を持って歩く5分10分はなかなか大変。
「ピアノの弾き語りにするっていうのはどう?」
そこから始まった発想です。
ギターもやるし、ピアノもやるしっていう弾き語りライブはこれまでもやってきた。ピアノがある会場はピアノを借りて、なければシンセピアノをレンタルして。それを今回はピアノだけでやる。自分の曲はギターでやる曲も多いから、ピアノだけにするのであれば自分の曲にこだわらずに提供した曲だけをやるというのはどうだろう。渡辺美里さんと配信ライブをする機会があった時に僕の曲をたくさんやってくれて、僕が忘れているような曲もやってくれた。それを聞いて、僕も自分でやってみたいな…と思う曲もあって、提供した曲をピアノでやろう!と。
ギターは「この曲だとギブソンかな」とか曲に合わせて替えることがあったけど、これまでピアノでそういうこだわりを持ったことがなくて、まずはピアノの種類を調べたら「世界三大ピアノ」というのがあることがわかった。スタインウェイ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー。スタインウェイは強くて攻撃的な音が出るのが特徴で、ベーゼンドルファーは温かくてぬくもりのある音が出る。そのベーゼンドルファーの音の響きが「ウィンナートーン」と呼ばれていることを知って、ウィンナートーンいいね!となって。ウィンナートーンをどうすれば僕らしくなるかを考えた時に、僕はフォークの人間だからボブ・ディランの「風に吹かれて」にあやかって「ウィンナートーンの風に吹かれて」というツアータイトルになりました。
みなさんお気付きだと思いますが、このツアーでは普通のメガネです。
ソロの時も「TM NETWORKの木根尚登」のソロライブということでTMのカバーをすることがあるからサングラスをしていることが多いですが、今日はTM NETWORKの木根尚登ではなく、ソロの木根尚登でもありません。楽曲提供をしたオジサンのライブです。ピアノは独学だし、歌も専門じゃない。TMでは40年近く歌ってるけど、宇都宮さんをハモってるだけで本職の歌手じゃない。今日は作曲家のオジサンです。
ほめてほしい?
1回だけ観に来てくれる人はわからないかもしれないですが、何回も観てくれている人は成長度とかうまくなってきたな…とか思うのかな。ちょっと慣れてきた時が一番危うい。TMの時もそうなんだけど、慣れてくると調子に乗っちゃうから。
土日とかで2日続けて公演がある時は曲を入れ替えたりする。TMではないけど。なんでTMではやらないか?歌う人が大変だからです。だって、曲を入れ替える必要なんてないんです。全部同じ曲でもいいんです。でも僕は今回は曲を入れ替えてやろうと。曲は少し練習する曲が増えてもいいんですよ。歌ですよ。歌が大変。誰か歌ってくれない?そしたらもっと丁寧に上手に弾けると思う。
ポーン
(ポーンと1音弾いただけで止まってしまう)
あれ?どの曲をやるんだっけ?
ちゃんと見てから始めないといけないのに、どの曲かわからないうちから弾き始めちゃう時がある。
どの曲だっけ?ちゃんと練習したでしょ!?思い出せ…思い出せ…
(弾き始めるが1フレーズで止まってしまう)
あれ?違う…
(数秒の間を空けて、普通に弾き始める)
木根さんの背中越しに譜面台が丸見えのポジションだったのですが、歌詞にコードと所々に手書きのメモ(何が書かれてるかまでは見えなかった)があるだけで譜面は何もない。
右手が奏でるメロディは一体どうやって何を見て練習してるんだろ???やっぱりもう1人の天才だよね🤔
— Kid Ayrack🇰🇿🇱🇻 (@Kid_Ayrack) June 18, 2023
トークコーナー
(ステージ上手のスツールに移動)
散々しゃべてるけど、ここからトークコーナーです。
初日が始まる1週間前くらいまで、本当にピアノだけでやるかどうかを悩みました。ピアノだけでやるって発表してしまったけど、ギターを横に置いておいていざとなればギターでやる…ことも考えましたが、挑戦しよう!とここまできました。
7つ下の妹がピアノを習い始めた時に家にピアノが来て。
1970年代、TVではグループサウンズが流行っていて、ドラムに憧れて鼓笛隊に入ったり、楽器の演奏に憧れた。家に来たピアノを見よう見まねで弾いてみたら、なんかそれっぽく弾けている気になって教室に置いてあったオルガンも弾いてみたり。あの頃あったのが足でペダルを踏んで、空気を送って弾くオルガン。それを適当に弾いてたら「すげぇ!木根、オルガン弾けるの?」「いや、弾けないよ。適当」って言いながらも少しずつ弾くようになって。中学に入ると、兄貴が持ってたギターを弾くようになって。だから、ピアノもギターのコード弾きをするような感覚で、コードを教えてもらったらそれに何となく合わせてみたりするようになったら重宝されて。フォークブームの時代だったけどロックも流行っていたから、ツェッペリンをやりたい先輩に手伝ってほしいって頼まれたり。先輩だし断れなくて、一生懸命練習したもんだから、リハーサル当日に熱が出ちゃって。熱があるって言い出せなくてフラフラになりながらスタジオに行って、演奏したことをすごく覚えてる。
最初は宇都宮くんと2人でやっていたフォークデュオにギターやベースが加わってバンドになってきて。だったら俺、鍵盤やるってピアノやオルガンをやるようになって。あの頃は1台買うのも高かったし、鳴らすためのアンプやら何やらですごくお金がかかった。今だったらシンセピアノを1台買ったら全部の音が出るし、なんだったらパソコンがあれば何でもできちゃう時代だけど。その頃に小室さんと知り合って、「僕と木根で曲を作って、ツインキーボードでやろうよ」って言われて。珍しい編成だったから「いいよ!やろう!」って受けたコンテストに受かって、いよいよデビューって時に「木根、ギターやってよ」って。そこから皆さん、耳にタコができているエアギター疑惑が始まった。今でも一般の人には楽器が弾けない人だと思われてる。アレンジャーの島田さんが入院された時にお見舞いに行ったら、「病院の人がみんな木根くんのこと知ってたよ。最近テレビ出た?」って島田さんに言われて。婦長さんに「あの人、楽器が弾けない人でしょ」って言われたよって。「あ!しくじり先生か!」。「いや、ちゃんと弾けますよ!」って言っといたよって言われた。
ポップでロックな音楽がやりたくて、その流れでTMになって。TMもそうだけど、ライブをやるってなったらこうやって足を運んでくれる人がこんなにたくさんいる。もし僕が曲を作るっていうことをやってきていなければ、今もこうして音楽をやっていなかったと思う。譜面を見て、正確に演奏することができるミュージシャンじゃないし、歌を歌う人でもない。カッコよく言わせてもらうとアーティストかな。独学でやってきたピアノとギターだけではこの世界で残れなかったと思う。曲を依頼されるようになって、曲が評価されて、自信になっていって。楽曲提供が自分の中で大きな世界を持つようになった。だから、提供した楽曲をどこかで披露したいなと思っていたから今回のような形で実現できてよかった。・・・ちょっと見切り発車だったけど。
あの子
バート・バカラックさんがお亡くなりになったというのを聞いて、中学生の時に宇都宮くんと2人で出たイベントでバート・バカラックさんのカーペンターズの曲をやったり、ユーミンの曲をやったりしたのを思い出してた。フォークデュオだったからオリジナル曲のタイトルが「自業自得」「しぐれ坂」「ひなたぼっこ」。宇都宮さんは僕と出会ったことでフォークを歌うようになって、「ひなたぼっこ」を歌ってたんだよ、あの子。そしたら小室さんと出会ってからは息が吸えないような曲を歌わされて。戸惑っただろうね。ウツと音楽をやるようになって50年。最近すごく尊敬するようになった。
客席:最近…?
ホント最近。自分で歌うようになってから、まず「歌うって大変なんだな」ってわかるようになってきた。TMではみんなウツを見てるから、いつお茶を飲もうと全然気にしなかったのに1人でやるようになるとお茶を飲むところをみんなが見てる。僕はこうやってギターでもピアノでも座ってライブやってるけど、ウツは踊ってたからね。RHYTHM REDの時とかは自分のパートで精一杯だから「あ、踊ってんなー」くらいしか思ってなかったけど、よく考えたらスゴイよ、あいつ。「ひなたぼっこ」を歌ってた子が。みんなは聞いてるだけだからいいかもしれないけど、歌う人は大変だよ。俺もあの頃は横で聞いてるだけだったから、どれだけ大変かは考えてなかった。TMは1音に2文字を乗せるような曲ばっかりじゃん?俺、Get Wild歌えないもん。あんなに速く「スリル」って言えない。
SKE48
名古屋で活動してるグループの曲を小室さん経由で依頼されて。曲がたくさん必要なのに時間がなくて。スタッフの人から「ストックでいいのでください」って言われて。ストックっていうと、残りモノとかダメだったものっていうイメージがあるかもしれないけど、そういうわけではなくて。ちゃんと作ったものがイメージに合わなかったりで返ってきたもの。それを僕のソロとして出す場合もあるし、TMで出す場合もある。K-POPの2PMってグループに曲を書いた時はシングル曲候補の最後の2曲まで残ったことがある。「ついに俺も世界デビューか!?」と思ったけど結果的に落ちちゃって。その曲はまだ取ってある。
10曲くらい渡した曲のうち半分くらいがオケになって帰ってきて、次に歌うのはそのうちの1曲。詞が徹貫なんだよね。このツアーが始まる時に「徹貫の曲やるから観に来てよ」って話してて、「埼玉だったら行けるかも」って話してたんだけどね。クマみたいな奴のくせに、乙女チックですごくピュアな詞。
売野雅勇さん
ある日突然、売野さんから連絡が来て。
「氷川きよしさんのYou are youを聴きました。僕がここ10年聴いてきた歌謡曲の中で1番です」って言ってくれて。むちゃくちゃうれしかったです。
歌詞が恥ずかしい
若い女の子の曲は歌詞が恥ずかしい。すごいキスしてたりとか。練習してるとだんだん恥ずかしくなってきちゃう。浅香唯さんの曲は当時20代前半だったら浅香唯さんが15才の時を振り返ってる曲。僕はただの作曲したオジサンで、これは浅香唯さんの曲であって僕が僕のことを歌ってるわけじゃないんだって言い聞かせないと。
TM
TMも始まるみたいで。アルバム聞いてくれた?なんか評判いいみたい。
もうしばらくピアノを弾きながら歌うっていうのはないと思うけど、次のTMでは何を演奏させられるか次第。次は一体何をやらされるんだろうって俺も楽しみ。もしかしたら木琴を叩いてるかもしれない。何でもやるよ。
木根さん公式がSpotifyに今回の演奏曲をプレイリストで公開してます。
M1 嵐のち晴れ(椎名へきる)作詞:田中花乃
M2 あてのない闇(宇都宮隆)作詞:西尾佐栄子、編曲:浅倉大介
M3 つきのひかり(寿美奈子)作詞:星村麻衣
M4 あしたの私に会いに来て(鈴木あみ)作詞:小室みつ子
M5 何故…(木村由姫)作詞:木根尚登
M6 スーパースター(カーペンターズ)
M7 You are you(氷川きよし)作詞:Kii
M8 ともだち(SKE48)作詞:小室哲哉・藤井徹貫
M9 HOLIDAYS(日置明子)作詞:売野雅勇
M10 雨が雪に変わった夜に(浅香唯)作詞:麻生圭子
M11 No Side(渡辺美里)作詞:渡辺美里
M12 さくらの花の咲くころに(渡辺美里)作詞:渡辺美里
EC1 桜が丘(木根尚登)*歌なしピアノ演奏のみ 作詞:木根尚登