没後25年に合わせて公開されたダイアナ妃関連の映画で、ドキュメンタリーではなくて俳優さんが演じている方の作品。メインタイトルの「スペンサー」はダイアナ妃の旧姓、サブタイトルの「ダイアナの決意」は、チャールズとの離婚を決意したと言われる1991年のクリスマスの3日間を描いているところから。
ダイアナ妃を演じるって、そこいらの役者では役に負けちゃうでしょ…と思っていたら主演はクリステン・スチュワート。ハンサムな美女なのは知ってたけど、ほんのり似てる。いや、似てないんだけどうまく寄せてる。イギリス人俳優を使えばアクセントを習得させる必要ないのに、それでもアメリカ人俳優を起用しただけのことはある。そして、ビジュアルだけじゃなくて演技もすごかった。精神的に追い詰められたギリギリの状態、張り詰めた糸が切れる寸前のヒリヒリするような言動が全編に及ぶ。観てる方もキツイ。味方になってくれるのは全世界で2人の息子とわずかなスタッフだけ。敵はチャールズとパパラッチと王室のルール。
常に人々の目やパパラッチの目があるだけではなく、王室のルールや慣習もがんじがらめ。食事のメニューも時間も決められているし、着るものも「朝食用の服」「ランチ用の服」「教会に行く時の服」と全てが決められている。クリスマスの3日間を描いた作品なので、食事のシーンが何度も出てくる。が、摂食障害で食べられない。席に着いても最初から最後まで座っていられない。途中で抜けて吐く。そもそも着替えて食事をする部屋に行くことができない。吐くので夜中にお腹が空いて、食品庫に忍び込んで盗み食いをする。見ているのがとてもシンドイ。
女王陛下が休暇を過ごす私邸サンドリンガム・ハウスが、ダイアナの生家であるスペンサー家の近くなのは事実。作中では生家は住む人がいなくなり、廃墟となって立ち入りが禁止されている設定だが、本当の生家は伯爵家であるスペンサー家の当主が今も住んでおり、ダイアナ妃のお墓もある。夏の間だけ一般公開されている。
衣装担当のスタッフとして登場するマギー。
どこかで見たことがある人だと思ったら、「シェイプ・オブ・ウォーター」の主演の人だった。本物のダイアナさんにもこういう人がそばにいてくれたのだろうか。終盤の展開は、もしかしたらそうなんじゃないのかな…と思っていたので、やっぱりそうか…と。いいんだけど、ただでさえ背負っているものが多いダイアナにさらにもう1つ重荷を背負わせることになったんじゃないの…?
エンドロールをぼんやり見ていたら、割と大きな文字で日本人の名前が。
存じ上げなかったけどすでに実績が十分にある方だったっぽい。ケネス・ブレナーの映画では常連スタッフらしい。「オリエント急行殺人事件」も「ナイル殺人事件」も観てたのに全然気が付かなかった。
未来に悲劇的な事故死が待っていることを私たちは知っている。
結果的に事故に遭って短い人生を閉じてしまったけれど、もしかしたら事故に遭っていなくても、あの精神状態では遅かれ早かれ自死を選択していたのではないか…と思わされる。希死念慮がある人は普通の人より死が身近にあり、何かのはずみで境界線を越えてしまいかねない。死を引き寄せてしまったのではないか。そんな気がする。