2017-09-09
2年に1度開催される「なら国際映画祭」。
2017年に「逆襲のシャア」が上映され、上映後に富野由悠季監督のトークショーが行われました。逆シャアもガンダム自体も未履修だった私。初見が冨野監督のトークショー付きという贅沢な鑑賞になりました。以下は当時に書いたレポです。
名作といっても、30年経つアニメーションなのでさすがに絵や動きに古臭さを感じるだろうなと思っていたのに、そういうことは全くなかった。むしろ宇宙での戦闘シーンは今の時代に見てもリアル。ストーリーや人物相関的なことを予習なしに見たから最初は「誰?」「どこ?」で、飛び交う固有名詞も「???」だったけど、だんだんわかるように描かれていたので問題なかった。ただ、どうしてクェスが男たちの間でモテモテなのかは理解できなかったな。ウザすぎるだろ、アレ…。
逆シャアどころか、ガンダム自体が初見だったので、何の予備知識も造詣もないのに監督のトークが聞けたのはマニアの皆さんに大変申し訳なく思うほどモッタイナかった。監督ご自身も「逆シャア」と略されるのだなどとても楽しく拝聴した。印象に残ったところを拾ったので内容が前後していたり、言い回しが実際とは違っていたり、知識不足のため解釈が違ってる箇所もあると思いますが監督トークと質疑応答をまとめました。
30年ぶりに頭から通して全編を見ました。ご覧になった通り、フィルムに傷が入っている場面もありました。奈良に持ち込まれてから裂けている部分が見つかって技師さんに修復していただきました。フィルム修復用のテープなんかまだあるのか心配でしたが、見事に直していただきました。フィルムの傷は見えてもテープ跡は見えなかったでしょう?フィルムは薬剤でつなげる方法とテープでつなげる方法とがありますが、いずれの方法も素人がやるとすぐにバレます。レーザーディスク、DVD、Blu-rayと新しいメディアに焼くたびに色チェックはするんですが、最初の15分ほどしか見ないので。ほんの数日前も4K対応の映像チェックをしたばかりですが、デジタルになればなるほど、フィルムが持つ色味の温かさが失われていくので、あれがガンダムだと思われるのは大変申し訳ないです。
30年ぶりに通しで見る機会を与えていただいて感謝しておりますが、30年ぶりに見て正直ゾッといたしました…。よくもまぁ、こんなにわかりにくい話を皆さん観てくれたなたぁ…と。作った本人が固有名詞やストーリーを覚えていない(苦笑)最初の20分くらいは全然何の話なのかわからないんじゃないですか?
僕はどんな映画でも恋愛映画でなければならないと思っていて、逆シャアもロボット映画のつもりは半分もなくて、恋愛映画のつもりでいくつかの男女の関係を描きました。30年前はオカルト的な考えが受け入れられる時代だったのでクェスのようなキャラクターを入れるべきだと思ってあのキャラを作ったのですが、、、僕はロリコンは嫌いなんです。クェスなんてのは本当にクソです。僕の理想の女性像はナナイ。ああいう女性に愛されたいな、と思って描きました。シャアがナナイの腰に手を回すシーンがありますが、どうしてリテイクしなかったのか…もっとこう…回し方があるだろ!と今は見て思ってしまいました。でも一番描きたかったのはチェーン。22〜23才で、一番現実味があり、等身大であるはずだったチェーンを描ききれなかったのはこの映画の大きな後悔の1つです。今見て、改めて敗北感を感じています。
後悔という意味では、戦い方がニュータイプの超能力頼りになってしまったこともその後の展開をどうしていけばいいのだろう…となっていたのでファーストが終了して、映画版という形で締めくくるチャンスを与えてもらったことには感謝しています。地球の存亡や人の生き死にを越えた大きなストーリー設定を作ることができた。ミノフスキー粒子というのをでっち上げることができたのも大きい。そういう大きな枠組があることが、30年経ってもこれだけの人が見に来てくださる理由だと思ってる。だけど、逆シャアの設定のままではいずれにせよ地球はに未来はない。だからGのレコンギスタはあれから2000〜3000年の時が経過してる必要があった。
Q.恋愛映画ということでしたが、僕が一番強く恋愛…というか愛情を感じたのはシャアとアムロの関係です。特にシャアのアムロに対する強い愛情を感じます。その点は意識されたことは?
A.映像を見ると、当時の絵コンテの状態を思い出すことはあっても脚本を書きながらそれぞれのキャラクターが何をどう感じていたかを考えてセリフを言わせていたので、当事者感覚なんですよね。だから客観的に見てどう感じるのか…という見方はできないので質問にお答えすることができません。
Q.エンディングですが、アクシズは失速しているわけだから地球への落下を防ぐならアムロやモビルスーツたちがアクシズを押す方向は物理的に逆なのではないか?
A.30年経った今だから言えることですが、物理的にどうなのかということは考えから落ちていたと思います。僕は仕事仲間とは友達にならない主義なので、友達だったら「あそこおかしいんじゃない?」と指摘してくれることもあったかもしれないのですが…誰にも指摘されたことがないんですよ。。。本当なら、アムロとシャアの超能力でアクシズをどうにかするべきだったとは思う。なのに…あー…作った本人が名前を覚えてない…あのT型のワケのわからない力で何とかなってしまった。でも、地上から見ても何かが起こったというのをわかるようにするためには必要なことだったんです。
Q.監督の小説も好きです。逆シャアは映画版と小説版とどちらが好きですか?
A.先ほどの質問でも申し上げましたが、自分で書いたものを客観的に見ることはできないのでどちらが好きということはないです。僕は映画人なので映画で表現していることが全て。映像なら「これが新しいガンダムか」というのを映像で見せたら一発でわかる。小説だと、どこがどう新しいのか事細かに説明しないといけない。そういう違いがある、というだけです。
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BEYONDのことを聞いてみたかったですが、猛者たちの熱気がすごくて、とても門外漢が出る幕ではなく、質疑応答では手を挙げることができませんでした。数か月後の2018年3月、この時に監督がおっしゃっていたと思われる4K対応メディアのリリース情報が新聞の一面広告に掲載されました。カッコイイですね。