2022年の第94回アカデミー賞は、ウィル・スミスの一件もあって日本でも大きく取り上げられた。おそらく普段は映画を観ない層やアカデミー賞の結果を気にしない層も知るところに。「ドライブ・マイ・カー」の国際長編映画賞の受賞は本当にスゴイことだと思うけれど、私は西島さんが見たくて観に行っただけの人なので多くは語れない(少し語ったけど)。
個人的には、同じ国際長編映画賞にノミネートされていた「ブータン 山の学校」の方が刺さったし、エンドロールを見ながら「これは心に長く残る映画になりそうだ…」と思った。
「ブータン 山の教室」
こんな時期だけど、見ておかなくてはいけない気がして最終日に滑り込み。人生で5本の指に入るかも。もっとたくさんの人に観てもらわないといけない映画。特に子供たちに、低学年向けには吹替版を作って見せてあげてほしい(歌唱シーンはママで)https://t.co/pivFFBSG9v
— Kid Ayrack🇰🇿🇱🇻 (@Kid_Ayrack) May 16, 2021
ブータンで教師をしているウゲンは、教師の仕事に魅力を感じておらず、あまりやる気もない。インターネットで海外の豊かさや便利な生活を知ってしまい、早くブータンを出て、オーストラリアで歌手になることを夢見ている。
そんなウゲンに出された異動。
赴任地は首都のティンプーからバスを乗り継いで、歩いて2日かかる標高4,800mにある人口50人ほどの小さな村。やっとの思いでたどり着いた村は壮大な自然の真っただ中、職場兼住居となる学校はボロボロの小屋で電気も水道も通ってない。黒板もない。教材もない。筆記用具もない。紙もない。やる気のなさとは裏腹に村人たちに大歓迎されるが、絶望的な環境に放り出されたウゲンの本心はただただ「帰りたい」――
ブータンの自然を見せつつ、現地の人たちの生活をドキュメンタリー的に描いた映画…と予想していたが、”大自然”という言葉だけでは到底表現できないほどの予想を大きく上回る自然の美しさとそれだけでも十分に伝わるものがあるのに、ストーリーもしっかりある。ウゲンや主要キャストは俳優さんを起用しているが、子供たちは実際に現地で暮らす子供たちを起用している。なので、毎日の暮らしや振る舞いに嘘がない。
ルナナのような環境で暮らす人たちが現在も同じ世界線にいることは頭ではわかっていても現実として受け止めきれなかったし、そこで暮らす人たちの価値観はとても衝撃的だった。独自の価値観を持っているにも関わらず、外から入ってきた人の価値観を否定することなく受け入れて押し付けない。その強さと優しさに圧倒された。
大事なもの、大事じゃないもの。
変わること、変わらないこと。
自分のちっぽけな人生と比較して考えちゃう。